「おいしかった」の声が何よりの原動力【鳥せい 帯広わかば店】

料理や食べることへの興味から、飲食業で働く道を選んだ樋口さん。自分の料理や接客で、来店客が喜ぶ姿を励みに充実した毎日を送っています。

小さなころから食への興味があり、料理を作ることや食べることが好きだったという樋口さん。高校は土木課へ進み専門知識を学ぶ一方、放課後は「鳥せい 帯広わかば店」でアルバイトを経験しました。「高校生の自分にとって、雰囲気が良く働きやすいアルバイト先だったので、卒業までの3年間お世話になりました」。高校卒業後は地元帯広を離れ、学んだことを生かして上下水道工事に携わる企業へ就職。しかし数年後に環境を変えて新しい道を進むと決めた時、頭に浮かんだのは好きなことを仕事にするということでした。「ずっと興味を持ち続けていた食に携わる仕事がしたくて、飲食業で働きたいと考えるようになりました」。帯広へ戻った樋口さんは、高校時代の思い出が詰まった当店へ連絡を取り、パートスタッフとして再び働きはじめます。「帰省の際にはお店へ食べに行っていましたし、弟も当店でアルバイトをしていたので、卒業してからも身近な存在でした」。以後正社員となるまでの1年間、地元の水道設備会社の勤務とのダブルワークを行い、多忙な毎日を送ったという樋口さん。「水道設備会社では、牛舎の給排水工事やマンションの水回りの工事など、いろいろな経験をさせてもらいました。体力があったから2つの仕事をこなせていたんでしょうね」と振り返ります。

当店の営業時間は16時から。樋口さんは14時に出社をして、仕込みや開店準備を手際良く進めます。串焼き用の肉を切り、串に刺すなど食材の準備をする他、焼き台の炭は開店の2時間前から火をおこし、テイクアウトの予約時間に受け渡しができるように調理を行います。ホールやから揚げの調理を担当していた高校生のころから業務内容はぐんと広がり、現在は主任としてその日のスタッフの人員や、店内の混雑状況を確認しながら、人手の足りない所をサポートすることも樋口さんの大切な仕事です。「お客様をお待たせしないために料理を提供する順番を考え、気持ち良くお食事をしていただける空間作りを目指しています」。また、学生や主婦などのアルバイトやパートスタッフとのコミュニケーションも大切にしているという樋口さん。「仕事を教える側に立つ場面が多いですが、みんなの学校やプライベートの話などを聞いていると、新しく知ることや発見があり楽しいです」。働きやすい職場環境とチームワークの良さは、良い接客へとつながります。樋口さんの心掛けは、長年愛されるお店づくりに一役買っているのかもしれません。

鳥せいは十勝のソウルフードとも呼ばれ、中でも若どりの炭火焼きやから揚げは、幼いころから慣れ親しんだ味という人も多い看板メニュー。クリスマスシーズンや大みそかには、当店だけで1日2000人前を提供するという人気ぶりです。「特に炭火焼きの調理は難しくて、まだまだ練習中です」と話す樋口さん。肉の状態や炭火の強弱を見極め、熟練の感覚で焼く炭火焼きは、シンプルだからこそ簡単には手掛けられないメニューだと言います。「いつかはお客様にお出しできる炭火焼きが焼けるようになり、すべての調理を任せてもらえる技術を身に付けたいです」と目標は明確です。

「『おいしかった』と声を掛けていただけることは、飲食業に携わる者として何よりの喜びです」と笑顔を見せる樋口さん。プライベートでは2歳と7カ月の2人の父親として、自宅で料理を担当することもしばしば。好きな飲食に携わる道を選び、料理で周囲の人たちを笑顔にしています。