笑顔を絶やさず正直な対応でお客様に接する【甘味処 抹茶茶房】

夫の転職を機にカフェを開くという新たな目標を立てた佐々木さんは、夢の実現に必要なスキルを学ぶため、未経験だった飲食店でのアルバイトを開始。外国人観光客への対応など、想定外の業務も積極的に対応しながら、夢の実現に一歩一歩近づいていきます。

佐々木さんは半年前、JR函館駅前の商業施設に店舗を構える「甘味処 抹茶茶房」でアルバイトを始めました。「会社勤めをしていた夫が家業の農家を継ぐことになったんです。将来、夫が作った野菜を使って、軽食を提供するカフェができるといいねという話になり、勉強をかねて働いてみようと思いました」。

これまでに飲食店で働いた経験はありませんでしたが、料理やお菓子作りが好きな佐々木さんはやる気満々で面接会場へ。将来、カフェを開くための知識と技術を学びたいとオーナーにしっかりと伝え、採用されることになりました。

勤務初日は先輩スタッフの補助をしながら1日の業務の流れを覚えるところからスタート。注文を伺い、先輩が作る商品をお客様に渡し、空いたテーブルを片付ける単純作業がメインでした。しかし、指示されたことをこなすのが精一杯だったため、お客様の反応を見る余裕もなかったと言います。その後、お客様の少ない時間帯にソフトクリームを作る練習や、パフェ類の作り方を学んでいき、十分に慣れたところで独り立ち。「初めて自分の力だけで作ったものをお出しした時は、お客様がどんな反応をするのかドキドキしながら見ていました。『おいしい』という言葉を聞いてほっとしたのを覚えています」。

接客については20代の前半から12年間歯科衛生士として働いていた時の経験が役に立ち、見知らぬ人と話すことへの苦手意識は感じなかったそうです。「歯科衛生士時代とはお客様との距離感が違いますね。感想を聞くときは、どのお客様に話し掛けるか、注文時のやり取りを参考に判断していました」。

また、駅前店という立地もあり、旅行中のお客様が多いのもこのお店の特徴の一つです。パフェなど、完成までに5分以上必要なメニューもあるため、注文される商品によって出発時間の確認が必要なのだとか。「列車が出発するまでの時間つぶしに来店する方も多いんです。乗り過ごすと大変ですので、オーナーからも『混んでいて時間がかかる場合には正直に伝えてください』と、教わりました」。売り上げを考えると待ち時間を短めに伝えたいところですが、お客様に迷惑が掛からないことを第一に考え、待ち時間は少し長めに伝えているそうです。

外国人旅行者の来店も多く、日に一度は片言の英語で接客するタイミングがあるのも予想外でした。身ぶり手ぶりを交えて対応し、「ベリーグッド」と味を褒められると、うれしさも倍増。今では必ず「ハブアグッドデイ」と声を掛けて見送ります。

この店で働き始めて丸6カ月が経ち、ようやくワンオペレーションでの勤務もこなせるようになってきた佐々木さんですが、今でも混雑時には慌ててしまうことがあるそうです。「混んでくると気が焦って、トッピングや具材の入れ忘れなど、ミスもしやすくなります。作業前にはこれから作るものを一度しっかりとイメージしてから始めます」。時には、仕上げの段階で見た目のバランスが悪くなってしまうこともあり、そんな場合には「ちょっと傾いてしまってすみません」と、おわびしながらお渡しするとのこと。更に、お客様が帰る際はホールに出て「どうぞお気を付けて」と一言添えて見送るなど、自分がされたらうれしいことを行うように心掛けています。

そんな佐々木さんが現在密かに考えているのが、新しいメニューを開発して商品化すること。「今はオーナーから教えられたレシピで商品を作っていますが、一から自分たちでやるとなれば、自主的に勉強もするでしょうし、私生活でのスイーツを見る目も変わると思うのです。挑戦してみたいですね」。

今後はコーヒーの焙煎方法も教わり、できれば5年後を目標にまずはキッチンカーで腕試しをしてみたいとの抱負を胸に、「今は教わったことを忠実に実践して、しっかりと基礎を固めるだけです」。将来の目標に向かい、日々の作業に全力で取り組む未来のカフェオーナーでした。