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失敗を重ねて覚えた技術でお客様の求める畳を作り上げる【桶作畳店】

2023年9月11日公開

私が選んだ職場

家業の畳店を手伝うため、中学生のころから作業場に出入りしていた桶作さん。高校卒業後は3代目として後を継ぐことを選択。2代目である父親に畳づくりのノウハウを学んでいきます。

代表/桶作 明さん(45歳)
北斗市出身。週に一度バスケットボールの社会人チームで汗を流す体育会系。今年地区優勝を果たして全道大会にも出場したジュニアチームのアシスタントコーチとしても活躍。

寸法を正確に測りゆがみに合った畳を作る

高校3年生の時、卒業後の進路が思うように決まらなかった桶作さんは、祖父の代から続く実家の畳屋で働く道を選びました。「中学生のころから配達などの簡単な作業は手伝っていたので、家業を継ぐことに抵抗感はありませんでした。父に相談したところ、畳が作れるように一から教えてくれるというので弟子入りを決意しました」。

1年目は父親の助手を務めながら現場の清掃や畳の運搬など、納品までの全体の流れを経験。作業員として働く一方、集合住宅の畳で練習を重ね、高校時代には関わることのなかった畳職人として必要な技術を教わっていったそうです。

床(とこ)と呼ばれる土台にござを貼り、縁(へり)を付けて完成させる畳づくりでは、採寸作業が最も重要になると言います。「畳の大きさはすべて同じではありません。新築の家でも床面の幅には誤差があり、その形に合わせて畳を作らないと隙間が生まれます。現場でどれだけ正確に寸法を測れるかで仕上がりは大きく変わりますね」。

採寸は部屋の中央に基準となる線を設け、おおむね3尺ごとに基準と壁までの距離を計測。この数値を基にゆがんだ平面に合った畳を作ります。

無理をしないで体力の消耗を防ぐ

現在は同店の代表として見積もりなども行う桶作さんは、注文が入ると初めに現場となるお客様のお宅へ打ち合わせに向かいます。既存の畳のコンディションを確認して土台がそのまま利用できるかチェックし、同時に部屋の状況も確認。「畳を入れ替える際にはこちらで家具を移動しますので、家具の上に置いてるものや貴重品は事前に片付けてくださいとお客様にお伝えします」。

複数のサンプルの中から畳表に使うござを選んでもらい見積書を作成。工事契約を結んだ後に日程を調整し、具体的な作業に取り掛かります。

畳の製作は機械化が進んだ一方で、昔と変わらない作業が畳の運搬です。「現場への運び込みは体力勝負です」と言うように、エレベーターのない集合住宅の場合には畳の枚数だけ階段を何度も往復しなくてはなりません。「若い時は最上階まで一気に持っていきましたが、現在は途中の踊り場にためて、2度に分けて運んでいます」と、無理しないことを心掛けているとのこと。同じ体勢で何枚も運んでいると握力が無くなってくるので、持ち手を変えたり、体で支えて手に掛かる重さを分散するなど、畳の持ち方をこまめに変えて体力の消耗を抑えるそうです。

移動させる時には畳の大きさを意識する

また、現場で畳を運ぶ時には、周囲への注意も欠かしません。「畳を持つと視界が大きく遮られます。歩行者や自転車が走ってこないことを先に確認してから畳を持って移動します。向きを変える時も壁や扉にぶつけやすくなるので、常に大きさをイメージして動くことが重要です」。

過去には横向きに運んできた畳を立てた瞬間に照明器具を直撃し、蛍光灯を割ってしまった経験があるとか。「畳のサイズが合わずに作り直すなど、いろいろな失敗を重ねてきました。その度に『ああすれば良かったのか』と多くのことを学んできたので、ある意味では失敗も必要な経験だったと言えますね」。

和室がある家も減り、畳の需要が減少している現代、畳の良さを知ってもらうのがこれからの自分の役割だと話す桶作さん。その原動力は、畳を入れ替えた時にお客様から言われた「部屋が明るくなった。替えて良かったよ」という喜びの言葉なのだとか。どんな疲れも一瞬で吹き飛んでしまうこの魔法の言葉を聞きたくて、工場内で黙々と作業を進める3代目でした。

  • 図面に書き込まれた数値を確認

  • 防カビ剤を吹きかけて表面を仕上げる

  • お客様との打ち合わせに持参するござのサンプルを用意

「まあいいか」と思ったことこそ実行する

畳はほぼオーダーメイドです。手を抜かずにしっかり作れば作るほど完成度も上がる一方、作業工程も増えていきます。若いころはここまでやらなくていいかと、手を抜いてしまったことがありましたが、結局収まりが悪くてやり直しました。経験上、サボって成功することはなく、後悔するケースがほとんどです。面倒なことこそ実行するのが成功への近道ですね。

桶作畳店

昭和3年創業。熊本県産のい草を使った畳表を複数取りそろえ、琉球畳や8角形の畳など、お客様の希望に対応する老舗畳店。今年の3月にはコンピューター制御の最新式畳製造機を導入し、これまでの倍の速さでの作業を実現。

北海道北斗市中央3丁目4-21
TEL.0138-73-8864