私が選んだ職場【焼肉物語 牛若】

複数の職業を渡り歩きながら専心できる仕事を探していた我孫子さん。知人に誘われて働き始めた先でお客様の心をつかむ接客を行う先輩に出会い、接客の奥深さに魅了されていきます。

高校を卒業後、市内のホテルに就職した我孫子さんは、いくつかの転職を経験。「飲食店やコンビニの店員、介護施設の受付事務など、どんな仕事が自分に合っているのかチャレンジしている部分もありました。そんな時、牛若で働いていた知人から、アルバイトスタッフとして働いてみないかと誘われたんです」。ホール業務の経験があったため、特に不安を感じることもなく知人の誘いを受諾。週に3日の勤務が決まります。

新たな職場は規模が大きい焼肉専門店で、過去に経験のある飲食店との勝手の違いもあって、入社した当初は戸惑うことが多かったと言います。「カルビを部位のことだと思っていたり、ハラミとサガリの違いも分からなかったので、肉の種類や部位を覚えるのに苦労しました」。オーダーを受ける時に、お客様から「脂っこくないお肉はどれ？」と聞かれたり、焼き方を尋ねられることも多く、すぐに答えられないこともしばしば。店員としてお客様からの質問に答えられないようでは駄目だと奮い立ち、先輩から焼肉の専門書を借りて必死に勉強したそうです。

その後、勤務日が週に4日、5日と増えていき、どうせなら社員にしてほしいと社長に直談判します。「職場のスタッフとのやり取りも含め、これまでに経験したことがないくらい仕事が楽しく感じたんです。この先もずっと長く働いていきたかったのでお願いしました」。仕事に取り組む姿勢と熱意が買われ、すぐに社員としての雇用が決まります

社員になって間もなく、接客への意識に変化が生じたことに気付きます。それまでは、注文されたものを配膳する係という感覚で接客をしていたそうですが、先輩スタッフ達がおもてなしの心で仕事と向き合っていることを知ってからは、自分でもお客様のためにできることを探すようになったそうです。「例えば、寒い日に来店したお客様に膝掛けをお勧めしたり、暖房の温度を高めに設定するなど、お客様のために何をすればいいか考えるようになりました」。特に、いつもお客様に寄り添った接客をする一人の先輩の姿に、自分もそうなりたいと弟子入りを志願。師匠と呼び慕うその先輩スタッフから時に厳しい指導を受けながら成長を遂げると、店舗の移転を機にホール長の肩書をもらうまでに。更にその2年後には店長に抜てきされました。

店長になって3年目の現在、お客様には料理を満足してもらうことはもちろん、スタッフのファンになってもらうことも目指している我孫子さん。そのために大事にしているのがお客様との会話だと言います。「来店された経緯や、どんなお肉が好みなのかなど、料理を運んだ時に言葉を交わすようにしているんです。毎日、可能な限りすべての席に顔を出すことを心掛けています」。

スタッフとの関係づくりにも重視。自分以外の社員スタッフが全員年上の男性であることを踏まえて、経営者を対象としたセミナーに出席したり、動画サイトでスタッフの育て方などを勉強。店長として相応しい対応や振る舞い方を身に付けるため、日々努力しているそうです。

こうした取り組みを通じて我孫子さんが目指しているのが、お客様にとっても、スタッフにとっても、最高の思い出となるような1日を過ごしてもらうこと。「社長からは『今日という日は二度とない』とよく言われます。だからこそ、心からできる限りのおもてなしでお迎えしたいのです」。

ふとしたきっかけで入社して、その時々の置かれた立場で全力を尽くしてきた我孫子さん。いつかは自分の会社を設立したいという夢を抱きつつ、現在の店長というポストを極めるために今日も笑顔で店内を駆け回ります。