私が選んだ職場【おんじき庭本 フレスポ戸倉店】

飲食業界一筋、40年を越えるキャリアを積んできた藤田さん。コロナ禍の影響で失業したものの、経験を買われて老舗の名店で正社員として再出発。厨房業務から新人スタッフの育成までを担当し、活躍の場を広げています。

コロナ禍の影響で勤務先が突然廃業し失業状態となった藤田さんは、人生初の失業保険を受け取りながら再就職先探しに取り組みました。「二十歳のころにアルバイトを経験して以来、飲食一筋でやってきました。年齢的にフルタイムで雇用されるのは難しいと考え、パートタイムで働ける場所があればと思って探し始めました」。
予想していた通り再就職活動は容易ではありませんでしたが、函館の老舗ラーメン店「おんじき庭本」の求人募集に目が留まり担当者に連絡。面接を受けた数日後、正社員として迎え入れたいと採用の通知を受けます。「20年以上カフェを経営し、他にも喫茶店や居酒屋の店長を務めた経歴が買われたようです」。
入社してから1年と3カ月、これまでの業務経験のお陰で、すんなりと新しい職場にも慣れることができ、現在は2店舗での業務を担当しています。

同社が展開する5店舗では、スタッフのほとんどはパートタイムとアルバイトで構成されています。社員である藤田さんは厨房やホール業務の他、新人スタッフの教育も担当。指導については自分自身の経験が大きく役立っていると言います。「自分が飲食業界に入った時に教わったのが『他のスタッフの助けになるような仕事をしなさい』ということでした。先輩たちがすぐに取り掛かれるように支度しておくという意味でした」。
道具を用意し、食材の下準備を済ませておいたりと、自分が何をすればいいのか常に考えながら動いているうちに他の人よりも早く作業を覚えることができ、先輩から仕事を頼まれることも増えていったという新人時代。当時を振り返り、「信用を得ることで複数の業務に関われるようになり、給料にも反映されてやりがいを感じましたね」と話す藤田さん。努力次第で現状は変えられること、自分の技術の向上につながることをスタッフに伝えたいと考えているそうです。

飲食業界で働くこと40年、藤田さんがお客様と接する際に現在でも大切にしているのが、あいさつ。「お客様が帰る時には『ありがとうございました』ではなく『ありがとうございます、またお願いします』という言葉を使います。終了形だとそこで縁が切れてしまいますからね」。
また、お客様の来店時にはどんなに混雑していても大きな声であいさつすることを徹底。例えば厨房で作業している時には店内に背中を向けており、店内の状況が分かりにくいもの。ホールのスタッフが「いらっしゃいませ」と声を出すことで、厨房内にいてもお客様の動きが把握でき、来店したお客様も自分が来たことに気付いてもらえていることが分かり安心感を覚えるのだそうです。「こうした接客を各自が身に付けることで、最終的には私が現場にいない時でも、常にスタッフ同士が声を掛け合い、質の高いサービスを提供できる状態にすることが目標です」。
そのためにも、気付いたことがあれば後回しにせず、その都度対処していきたいという藤田さん。これまでの経験で培ったことを惜しみなくスタッフに伝え、これからもお店を盛り上げていきますと抱負を語ってくれました。