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私が選んだ職場【道南食糧工業株式会社】

2021年6月7日公開

私が選んだ職場

短期間のお手伝いのつもりで働き始めた河野さんは、慣れない作業に従事する中、次第に仕事の楽しさに気付き、ついには技能士の資格を取得。みそづくりに没頭していきます。

知らないことが多い環境を楽しみ、興味を持ったことを突き詰めて国家資格を取得。

製造部/河野良輔さん(30歳)
みそ製造技能士2級。各種調味料のベースとなる麹、みそ、酒粕の加工品製造を担当。

言われたとおりに動いて、仕事を体で覚えていく。

大学を卒業して就職活動を続けていたある日、河野さんは、みそ・しょうゆの醸造業を営む親戚から「人手が足りないので、少しの間手伝ってほしい」と声を掛けられます。みその原料が大豆であることも、麹が何に使われるものなのかもほとんど知りませんでしたが、一時的に手伝うだけならいいだろうと、簡単な気持ちで引き受けました。
入社して担当したのは、麹とみその製造補助。大豆を煮て、米を蒸し、麹菌をまぶして混ぜ合わせる作業など、どれもこれも初体験のことばかり。「右も左も分からない状況でしたから、工場長に言われる通りに動いて業務を覚えていきましたね」。
一度に仕込むみその量は約1.3トン。主原料となる大豆だけでも400キログラム近くあり、釜や蒸し器に入れる作業はほぼ手作業。働き始めた当初はすぐに筋肉痛になったと言います。「みそや麹を混ぜる時に大型のスコップを使用しますが、力任せに作業をしたり、体をうまく使えないと腰を痛めてしまうので注意が必要です」。みその仕込みは月に一度、麹の仕込みは週に一度のペースで行なわれ、1年ほどかけて体の使い方に慣れていったそうです。

深く掘り下げて勉強し、学んだことを仕事に生かす。

初めて経験することばかりで戸惑うことも多くありましたが、「経験することの一つひとつが新鮮で、知らなかった世界を知る楽しさを感じていましたね」と、河野さんは当時を振り返ります。中でも興味を持ったのが、微生物が深く関わる発酵の世界。微生物の働きやすい環境を整えることがみそづくりでは重要と知り、そのために何をどうすれば良いか、常に考えるようになっていったそうです。「機械みたいに流れ作業的に業務をこなすのではなく、今行っている工程が微生物にとってどう重要なのか、理論的なことを学んで考える癖を付けることで毎日の作業にしっかりと向き合うようになりました」。
働き始めた当初は、親戚の会社のお手伝い程度に捉えていた仕事でしたが、いつしか発酵について自主的に調べるようにもなり、東京で行われるみそづくりの講習会にも参加。国家資格であるみそ製造技能士の試験を受けるなど、気付いてみれば入社から5年の月日が経っていました。

発酵を制御するために、経験を重ねる。

みそ技能士の試験に合格した河野さんは、まだまだ経験が足りていないと自らを評します。「みそづくりの基礎的なことは覚えましたが、全国の蔵元によっては設備も気候も異なります。これからは当社があるこの場所に適したやり方を見つけていかなくてはなりません」。
みそは仕込んでからおよそ一年経たないと結果が分からない食品。すべての工程が上手にできたと思っても製品の出来に結びつかないことや、その逆もあるそうです。基本的に仕込んだ後は自然任せ。その中で毎年均一な製品を作り出すのが作り手の腕の見せどころだと河野さんは話します。発酵が進み過ぎていればみそを涼しい場所に移動し、遅れていれば蔵の温度を上げて発酵を促す。現在その作業は工場長の長年の経験に裏打ちされた勘が頼りです。こうした一流職人ならではの勘を身につけるのが河野さんの今後の大きな目標と言います。そのために10年、20年と経験を積む覚悟はできているそう。少しでもいいものを作りたいという思いを胸に、今日も作業に打ち込みます。

  • 作業中もこまめに手を洗浄

  • 仕込んだ麹が熱を持ち過ぎていないか素手で触って確認する

  • 工場に併設された直売所では約30種の調味料が並ぶ

  • 仕込んだみそは樽に入れておよそ一年間じっくりと発酵させる

設備の洗浄を徹底し品質を守る

工場内の清掃と、道具や設備の洗浄は徹底して行なっています。異物の混入や雑菌汚染を防止するという目的はもちろんのこと、わずかな汚れによって発酵が阻害されて味そのものが左右されることもあり得ます。使用した機械はすべてバラして、作業をする前にも必ず清掃してから使います。品質の均一化を保つためにも欠かせない業務ですね。

道南食糧工業株式会社

昭和17年創業。しょうゆ、みそをはじめ、200種類以上の業務用調味料を製造・販売。食の街函館の味を陰で支える。各種品評会において受賞歴も多数。

北海道函館市栄町2-7
TEL.0138‐22‐2721
http://kikkokawa1.com/