私が選んだ職場【Select Clothing unjour】

幼いころからファッションに強い関心を持っていた本村さんは、お気に入りの服が見つかるまで探し続けるこだわり派。服に対するそんな強い思い入れが現在の商品選びにつながっています。

「小学生のころは日曜日になると百貨店に連れていってもらい、洋服を見て回るのが大好きでしたね」。そんな本村さんの「大好き」が仕事として動き出したのは、子育てを始めてからのこと。自分の子どもに着せたいと思う服がほとんどなく、外国から通信販売で服を手に入れることを思いつきます。「調べてみると、海外の有名ブランドの子ども服が手ごろな価格で販売されていました。まだインターネットは広まっていない時代で、ファッション誌でもほとんど紹介されていませんでしたね」。
届いた服を子どもに着せたところ、友人から「一緒に注文して欲しい」と頼まれるようになります。最初は買い物感覚で楽しんでいましたが、次第に引き合いが多くなり、夢だった洋服店として展開できるのではと考えるようになったそうです。物は試しと早速カタログを自作して、通信販売を始めてみるとこれが大好評。口コミで噂が広がり、地元の新聞で取り上げられると、手に取って商品を見たいという人が自宅を訪れだしました。「知らない人が家に来ることに抵抗があったので、それならと、広い会場でガレージセールを開くことにしたんです」。
イベントは大盛況。すぐに開催した第二弾も多くのお客様でにぎわい、この催しが縁となって、知人が新たに始める洋服店のお手伝いをすることになりました。

思いがけず洋服店のスタッフとして働くことになった本村さんは、家族の介護に専念するために退職するまでの13年間で、販売だけでなく問屋さんでの仕入れや、海外での買い付けなど一連の業務を経験。その後、介護が一段落付いたタイミングで友人からアンジュールのオープニングスタッフとして手伝って欲しいと声を掛けられます。「時間のやりくりもだいぶできるようになっていましたし、何よりファッションがずっと大好きでした。以前からお付き合いのあった旭川の問屋さんがオーナーで、取り扱う商品やお店のデザインなどもすべて自由にしていいと言う条件に引かれて挑戦してみることにしたんです」。
新しいお店で目指したのは、自分たちスタッフと同じ年代の人が着たいと思う服を扱うこと。これまでの経験から、歳を重ねていくとどんな服を着ていいのか分からないというお客様が多く、40代以上の方のファッションリーダー的なお店が求められていることを常々感じていたと言います。いろいろなお客様の意見を取り入れながら、自分たちも一緒に歳を重ねていけるお店にしよう。コンセプトは決まりました。

仕入れをする際には流行を追わず、他のブランドにも合わせやすい服であることを意識。着こなしのバリエーションが効く服をお勧めしたいので、デザインにばかり気を取られないように気を付けているそうです。「着心地のよさも大きなポイントです。デザインが良くても動きづらかったり生地がごわごわして気になる服だと、結局は着なくなってしまいますからね」。こうした心遣いに共感したのか、顔なじみのお客様が年々増えていきました。
オープンして丸7年、お店の経営もようやく軌道に乗り、最近では衣料メーカーに裾の長さやボタンまわりのデザインの希望を出したり、オリジナル商品も企画できるようになってきました。これもすべてオーナーが好きにやっていいと任せてくれているお陰と話しますが、自由だからこそ責任もあると気を引き締めます。「売り上げなど結果を出さなくてはならないので、自分でお店をやる以上にちゃんとやらなきゃいけないという気持ちは強いですね」。
毎年、少しずつ新しいことに取り組むことができ、どんどん楽しくなっていくと話す本村さん。みんながアンジュールの服を着て幸せになって欲しい、と願いながら、今日も笑顔でお客様をお迎えします。