一人ひとりの適性や興味を理解し個別のアプローチで利用者をサポート【就労継続支援B型事業所 でじるみ函館吉川】

20年間グラフィックデザイナーとして働いてきた須藤さんは、地元へのUターンを機に福祉の世界を新たな職場として選択。利用者の創作活動を手伝う中、その成長を目の当たりにして、全力でサポートしていく決意を固めていきます。

専門学校を卒業後、約20年間グラフィックデザイナーとして働いてきた須藤さんは、家庭の事情で地元函館にUターンしました。「これまでに培ったスキルを生かせる職場がないかシゴトガイドを見ていたところ、『でじるみ函館吉川』でクリエイターを支援するスタッフの求人広告を見たんです」。

就労継続支援を行う事業所の存在については認識していましたが、クリエイト系の業種があることを初めて知った須藤さんは、「自分のスキルで支援ができるのならぜひ協力したい」と思い担当者に連絡。過去にかかわった仕事のポートフォリオを送り、面接を経て、働くことが決まりました。

イラストや動画制作など、デジタルコンテンツを扱う同事業所では、作業の多くの工程を利用者が行います。須藤さんは他のスタッフと共に制作に必要なスキルを教える講師として勤務。デザインコース担当として利用者にかかわっているそうです。「まず教えるのがデザイン用ソフトの基本的な操作方法ですね。その後、図形を加工する各ツールの使い方など、徐々に難易度を上げていきます」。

過去には専門学校の体験入学の講師や、勤務先の後輩に教えることもありましたが、それらはすべてパソコンやソフトの扱い方を勉強してきた人を対象としたものでした。パソコンに触れたことのない人もいる今回の職場での状況は、クリエイターとして20年のキャリアを持つ須藤さんにとっても初めての経験。しかも、福祉についてはこれまでほとんど接点のなかった世界であり、講師としてうまく務まるか多少の不安はありました。しかし、「すぐに無用の心配だったと分かりました。所内の雰囲気は一般的な制作会社と変わらず、教える側と教わる側という関係がありますし、利用者さんは学びたいという気持ちが強いので、やりやすく教えがいもあります」。

指導する際には、教科書のような画一的な教え方をしないのが須藤さん流。一人ひとりの作業の進捗状況を見て、それぞれのレベルに合ったことを相手が理解しやすい言葉で伝えることを意識しているそうです。

利用者が作業している最中は、各テーブルのモニターを見て回り、作り方に悩んでいる人がいればどう作っていくかをアドバイス。「『ここがおかしい』と指摘するのではなく、『こっちに配置するとバランスがいいので移動させてみましょう』と、具体的に説明してデザインの考え方を伝えるように心掛けています」。

入社して1カ月、まだ日が浅いながらも利用者の成長する様子を目の当たりにして、自らも刺激を受けているという須藤さん。短期間のうちにフライヤーのデザインや、パンフレット、看板を制作する姿を見て「この調子でスキルアップして、どんどん社会に出て活躍してほしいですね」と、次のステップを考える時間も多くなったそうです。

そのためにできるのは、自分が経験して得た技術を提供し続けること。「動画編集で有名になったとか、イラストレーターとして名が売れてきたなんて声が聞こえてきたらうれしいでしょうね。この事業所からスターが誕生するのは時間の問題ですよ」。利用者が作業する様子に目を向けながら、そう確信する須藤さんでした。