お客様の要望に応え手作りにこだわった餃子を提供する【虎の星ギョーザ】

奥様が始めた店を手伝うことになった髙橋さん。これまで経験した接客業とは異なる魅力に気付きながらこだわり抜いて作った餃子のおいしさを発信。地域おこしにも関わっていきます。

運営していたたこ焼き店を閉業して新たな職場を探していた髙橋さんは、奥様が同じ場所で始めた餃子専門店「虎の星ギョーザ」で働くことになりました。「店のあるこの中島廉売という商店街は、転勤で函館に来た日に見て『いいところだな』と直感した場所でした。その後、お気に入りの散歩コースとして訪れていたある日、空き店舗になっているのを見てすぐに借りた店だったんです」。

を軽減す起業志向の強かった髙橋さんにとって思い入れのある場であったこと、また、接客があまり得意ではない奥様の負担るための判断だったそうです。

医療機器メーカーのセールスエンジニアとして働いていた経験のある髙橋さんにとって、不特定多数の人を相手にするのはむしろ得意な部類の業務でした。たこ焼き店時代もそうであったように、「すべてはお客様のために」をモットーに取り組み、来店時よりも良い気分になって帰ってもらうことが接客する上での基本。「特別難しいことをするわけではありません。自分がお客さんとしてきた時に、どんなことをしてほしいか考えると、やるべきことが見えてきますよ」。

気に入った地域に再び関われることになり、仕事だけでなく、日々の生活にも張りが生まれました。

最近でこそ髙橋さんが出勤するのは営業開始の1時間前ですが、当初は餃子の仕込みに4、5時間を要したと言います。「材料を刻むだけでも、たこ焼きの何倍も時間がかかるのは誤算でしたね。使用する調味料を事前に合わせておくなど工夫することでスピード化を実現しました」。

現在は調理の大部分を奥様が行い、髙橋さんは掃除や洗い物を主に担当。厨房内で作業する時には手を動かしながら打ち合わせを行い、お弁当の予約数や食材の在庫など情報を共有して、足りないものがあれば混雑する時間帯を避けて仕入れに行きます。

営業時間になると、客席に移動してお客様の来店を待ちます。あいさつを含め、接客の際には声のトーンを高めにして話すことを心掛けているといいますが、そうすることで元気のないお客様の気分を引き上げる効果が期待できるのだとか。「実はいつものように仕事をしていても、気が重く調子が上がらない時がたまにあります。そんな時、笑顔で注文するお客様と接することで、不思議と気分が晴れることがあるんです。接客はお客様からエネルギーがもらえる仕事でもあることを知りました」。

オープン以来順調にファンを増やし、まもなく開店一周年を迎える虎の星ギョーザ。今後も更に多くの人にこの餃子の味を知ってもらいたいという髙橋さんは、売り上げが伸びることよりも、餃子を褒められた時の方が何倍もうれしいと言います。「皮から具の刻み方までこだわり抜いて作ったものがおいしいと言われた時のうれしさは格別です。当店の餃子が食べたいと求められ、その結果として2号店、3号店と広めていけたらいいですね」。

また、店のある商店街を盛り上げる力になりたいと、もう一つの目標を持つ髙橋さん。店の一角には近所に住む子どもたちのために駄菓子屋コーナーを設け、足の不自由な高齢者にも気軽に餃子を食べてもらおうと無料配達サービスを行っています。「もともと、この商店街に一目惚れしてお店を出した経緯があります。若い人向けにも情報を発信して、次の世代にこの商店街を引き継ぎたいですね」。

今後は商店街の各店舗をインタビューして回り、その日のお勧め商品を紹介する動画サイトを作りたいとのこと。二つの目標に向かって、今日も虎の星ギョーザから「いらっしゃいませ」と少しトーンの高いあいさつが聞こえてきます。