一杯一杯全力で作りお客様が完食する料理を提供する【かつてん MEGAドン・キホーテ函館店】

飲食店のホールでの勤務が長かった清水さんは、いつか経験してみたいとあこがれていた厨房業務に初挑戦。予想を超える忙しさや、家庭料理との違いに苦戦しながらも、一つひとつ確実に業務をマスターしていきます。

子どもが幼稚園に通うようになって時間に余裕ができた清水さんは、パートタイムで働ける仕事を探し始めました。「過去の経験を生かして、飲食店でのお仕事を探していました。これまではホール業務ばかり担当してきたので、できれば厨房業務に携わりたいと思い、職場探しを進めていきました」。

こうして絞り込んだのが「かつてん MEGAドン・キホーテ函館店」でした。早速電話で連絡を取り面接へ。店長の人柄が良く、明るい職場の雰囲気も好印象で、こんな職場で働きたいと思ったと言います。「面接では履歴書に書いた自己アピールの内容にも触れていただきました。実は普段から音楽活動を行っていて、演奏することの多い土日や祝日に出勤できないかもしれないとその場で伝えたんです」。

しっかりと希望を伝えたことで音楽活動に対しても理解され、平日のみでの採用が決まりました。

店長から「見て覚えるのが大事」と教わった清水さんは、最初の数日間は食器を洗いながら先輩たちの様子を見て、作業の流れを覚えました。続いて天ぷら粉の用意や野菜の下準備を担当しますが、野菜のカットにもお店ならではの工夫があり感心したと言います。「料理の提供時間を早くするため、タマネギを薄めに切ることで火が通りやすくします。家庭料理の感覚で厚く切ると十分に熱が入らずクレームにもつながるので、自宅での癖が出ないように注意が必要でした」。

また、天ぷらも家庭とは勝手が異なりました。中でもエビの天ぷらは衣を重ねて「花」と呼ばれる状態に揚げなければならず、コツをつかむまでにひと月ほどかかったそうです。「エビは慎重に油に入れないとすぐに丸まってしまいます。衣もバランスよく付けなくてはなりませんし、尻尾の先がしっかりと開かなかったりと失敗ばかりしていました」。

フライもマスターするのに苦戦した料理の一つでした。看板メニューのトンカツは衣が剥がれないようにしっかりと押さえつつも、力が強すぎると肉が硬くなってしまいます。この微妙な力加減を身に付けるのに一苦労。更にエビフライは肉以上にデリケートな扱いが必要で、今でも一番緊張する作業です。

昼食時にはこうした作業を手際良くこなさなければならず、清水さんは働き始めた当初「なんてところに入社してしまったんだ」と、厨房業務の難しさを再認識したそうです。それでも、なるべく早く業務に慣れるために出勤日を多くしてもらい、頑張ったかいもあって3カ月が経つころには忙しい時間帯でも冷静に対処できるようになりました。

入社して1年が経った現在は、どんな業務を任されても大丈夫と思えるまでに成長。「お客様の『おいしかったよ』という言葉に励まされましたし、食器を洗う時にご飯粒が一つも残っていない丼を見た時にはうれしくて自信にもなりました」。

今後は「キッチンで一番信頼される従業員になりたい」と目標を語る清水さん。そのためには店長からたびたび言われる「初心を忘れないこと」という言葉を実践することが重要と背筋を伸ばします。「慣れてくると妥協する気持ちが生まれがちです。毎日何杯もカツ丼を作りますが、お客様にとっては唯一の一杯です。私自信、手を抜いた一杯が出されたら悲しいと思うので、すべてのお客様に精一杯作った食事を提供したいです」。

音楽と同様、手を抜かない料理で多くの人を感動させたいと決意する清水さんでした。