ストレスなく、好きな車に向き合う日々地元で安心して働けています【株式会社辻商会】

私たちの暮らしに欠かせない自動車はいつか役目を終えます。その際の環境負荷を抑えるためには、適正な処理と、部品のリサイクルが不可欠。車両を解体し部品を再生させる辻商会に転職した浅野さんは苦手だった接客から離れ、自分らしく働けるようになりました。

父親が大工で、多くの工具に囲まれて育った浅野さん。幼少期から手先が器用で大工を目指していましたが、両親が乗っていた車にあこがれ、興味が移りました。進学先は自動車科のある高校を選択。金属部品の溶接や、車両検査といった実習に夢中だったといいます。

自動車整備士の資格を取得し、高校卒業後は旭川市内の自動車関係の会社に入社。顧客の困りごとを着実に解決するメカニックとして、20年近く経験を積みました。「車の調子の悪いところを見つけて直すことができれば、満足してもらえます。機械が相手なので、自分に合っていました」。

ただその会社で働く以上、キャリアアップと無縁ではいられませんでした。浅野さんはその後営業担当になりましたが、接客の難しさを感じるようになっていったそうです。シャイな一面もあり相手と時間をかけて関係性を築きたいタイプでしたが、営業職となると顧客に寄り添い、懐に飛び込むことも欠かせません。「人付き合いが得意ではなく、自分のペースだけでは仕事を進めにくい場面がありました」と振り返ります。営業職をいつまで続けるのか、メカニックに戻れるのか。不安は募る一方でした。

もんもんとした日々を送っていた浅野さん。ある時、長く自動車業界にいる知人に「営業の仕事、どう?」と声を掛けられます。浅野さんは「いや、実は」と現状を伝えつつ、自分がどんな仕事をやりたいのか、改めて考え始めました。そして浅野さんは「ずっと車に触れていたい」という答えを確信。幅広い業界研究の末に興味を持った辻商会に自ら連絡し、無事採用されることになりました。

2020年に転職して初めの1年半は、取り外した部品を全国に発送したり、部品を洗浄したりする仕事を担当しました。現在は上長が作成する「カルテ（指示書）」に基づき、エンジンやタイヤ、ワイパーなどあらゆる部品を正確に取り外し、商品として再利用できるか状態をチェックする一連の作業を行っています。長く整備士をしていただけあって、浅野さんの作業スピードは即戦力です。「それまで2時間かかるとされてきた仕事を自分が1時間半でできると、向いているのかなと思えますね」。幼少期から工具に親しんだ原体験や、手先の器用さも生きているのでしょう。

業務に慣れた現在も更に効率を高めるべく、判断力を磨くことに余念がありません。「傷や色の落ち方はさまざまで、同じ状態の車体は1つもなく、どんな部品に需要があるかも常に変わります。経験を積み、再利用できるか廃棄するか見極める精度を高めたいです」。

技術の粋を集めた自動車の部品は、実に3万点以上に及ぶと言われています。それだけに、解体は専門知識がなければ難しそうな印象もありますが、浅野さんは「そばにベテランがいるので、未経験でも難しくありません」と明かします。最初はエアコンのガス抜きやエアバッグ処理といった専門的な作業はせず、ワイパーの取り外しなど簡単な作業から始まります。また顧客の車を扱う整備と違い、解体ではそこまで気を使わないそうです。

辻商会では苦手だった接客はもちろん、販売目標の達成や転勤の有無を考えることはありません。浅野さんは食事が規則的になり、体調が良くなって営業職のころより7kgほど減量できました。「期日に追われず、残業がなく、休みも取りやすいのが今の会社の良いところ。 プライベートの時間を確保しやすいです」と満足そうな表情を浮かべます。

辻商会に入社してからフォークリフトの免許を取り、使用済み自動車を適正に処理する「自動車リサイクル士」の資格取得も視野に入っています。「このままステップアップし、地元で安心して長く働けたらうれしいです」。環境に優しい仕事で力を発揮し、人に優しい職場に居心地のよさを感じる浅野さんは、今日も一途に車に向き合います。